硬膜動静脈瘻の治療の合併症について

  硬膜動静脈瘻は正しく治療されればかなり効果的な治療が得られるということはこのページ作成の目的でもありますが、ここでは具体的に硬膜動静脈瘻の治療の際に起こりうる合併症とその仕組みについて解説します。

  硬膜動静脈瘻の治療の目的や治療の考え方についてはこちらのページをご覧ください。

  静脈からの治療の場合の合併症

  静脈からの治療の目的はこの硬膜動静脈瘻に罹患(乗っ取られた)静脈洞を閉塞させることです。 しかし、この「乗っ取られた」静脈の見極めが重要であり、脳の静脈がまだその静脈洞を利用している場合(乗っ取られてはいるが、完全ではない)、その部分を閉塞させることによって重篤な合併症を起こすことがあります。 その仕組みを以下のイラストで解説します。

  治療の目的は逆流している静脈を閉塞させることですが、逆流しておらず、脳が血液の排出路として使っている静脈を閉塞させるとその領域の脳が静脈還流障害という状態を起こし、出血や脳のむくみなどを起こします。 この逆流の静脈と正常に使用している静脈はまれに混入していることがあり、十分な画像の観察が必要です。

  さらに、ボーデン分類のタイプ1に相当するものは静脈を閉塞させると上記の静脈還流障害を起こす可能性が非常に高く、静脈洞と閉塞させる治療は決して行うべきではありません。

  動脈側から治療した場合の合併症

   硬膜動静脈瘻の治療の基本は静脈側からの治療ですが、状況によって動脈側から治療することがあります。 特に動脈側からの治療(経動脈的塞栓術)が有効で第一選択になりやすいのは「前頭蓋底の硬膜動静脈瘻」、「小脳テントの硬膜動静脈瘻」、「脊髄硬膜動静脈瘻」の他にそれ以外の部位の硬膜動静脈瘻でも静脈洞が完全に罹患されたボーデンタイプ3のものがあります。

   動脈側からの治療では液体塞栓物質を使用します。 (コイルなどの治療では完治が得られないどころか、その後の治療のための血管の経路を閉塞させ、その後の治療を困難にする可能性があります) 液体塞栓物質は血管の中に浸透し、シャントの部分を閉塞させるのにとても有効な塞栓物質です。 しかし、その反面、病気の血管の部分のみならず、正常な血管とのつながりにも流入し、脳梗塞や神経の麻痺などを起こす可能性もあります。

   この動脈からの治療の合併症を避けるには十分な血管解剖の知識が重要であるが、その学習は容易ではありません。 さらに、解像度が十分なレベルにある脳血管撮影装置も治療の成否に重要になります。 

   それ以前に治療の必要性の少ないタイプの硬膜動静脈瘻に対し、根治を目指す動脈からの治療があります。 この状況では治療のrisk/benefit(治療の危険性と有用性のバランス)がとれないと考えます。