脳の「静脈奇形」

   「静脈奇形」という名前は不適切であり、さらに脳動静脈奇形などと混乱しやすい名称でもありますが、現時点で日本語の名称でこの状態を性格に表すことができる表現がありません。 
   血管の構造には他の体の構造の個人差と同じようにある程度形のバリエーションがあります。 それを個人の特定に利用することができる手の静脈の認証などが実際銀行のATMで使用されています。 しかし、このバリエーションが極端になってくると「異常」のような形態を呈するようになります。

正常な脳の静脈還流の概念。 脳の各部位から比較的均一に静脈が配置されている。 これらが周囲の太い静脈洞に流入し、血液を心臓に返す役割をしている。

  静脈の破格ということが適切であり、英語ではdevelopmental venous anomaly(DVA)と1986年にこの状態の機能の側面と含めた名称が与えられるようになりました。 それまでは「奇形、malformation」という名前で呼ばれていたため、「異常(病気)」としての扱いをされてきました。 Abnormal(異常)ではなくanomaly(破格)という言葉が示すとおり、構造のバリエーションの極端であることがこの名称からこの状態が徐々に正しく理解されるようになりました。

  この静脈の破格は脳に必要な構造である。

  このメッセージはとても重要なもので、脳の静脈の排出路の役割をしているこの静脈の破格は見た目が悪くても脳にとって必要な機能を果たしているため、これを体から取り除いてしまうと正常の静脈の機能が失われ、静脈還流障害ということが発生し、重篤な血管を招くことになります。

  正常な機能をしてくれているが、脆弱な構造ではある。

いわゆる「静脈奇形」または静脈の破格(DVA)を示すシェーマ。 黄色の矢印がDVAの流出路である。 DVAは点線で示すように通常の静脈よりも広い範囲の静脈還流を担当しており、周囲との連絡(側副血行)が乏しく、脆弱な構造であることがわかる。 脆弱な構造ではあるが、正常脳の静脈還流の大きな役割をしているため、これを切除したり、つめたりするような治療は「静脈還流障害」を起こし、脳出血などの問題を引き起こすものである。

  上述のようにこの静脈の破格は正常な機能していますが、構造が理想的なものではないため、脆弱性があります。 (住宅の柱に問題があっても、柱としての機能はしているため、いきなり取り除くことができないと同じですが、構造的に理想的な柱ではないため、異常時に負荷に耐えられない可能性があります。) 

 この「静脈奇形(破格)」は手術で摘出したりしてはいけない。 静脈性梗塞が発生します。

  例えば、この部分の静脈の下流がたまたま閉塞してしまった場合、還流領域が広いため、通常の静脈が分散して存在している状態よりも脳へのダメージの範囲が広くなります。 このような現象が原因で脳にむくみや出血が起こることがあります。 しかし、これでもこの静脈の破格が原因ではなく、これが機能できなくなったために発生した問題であり、治療を考える場合にこれらの仕組みを十分に検討する必要があります。

  出血した症例の多くはこの静脈の破格そのものによるものではなく、近傍に存在することが多い海綿状血管腫によるものが多いとされています。 自験例でも出血が多いのは海綿状血管腫によるもの、流出路の狭窄(または閉塞)によるもの、シャントのようなものがある状態の順になります。